オレンジ色にして

コンピューターで言えばウイルスみたいなもんだよな、と心の中で苦笑しつつ、半分にご飯を減らした器を、まのの前に置いた。

同時に答える。

「シェフじゃなくて、俺は主夫だ。女偏のほうじゃなくて、夫の字で書くほう」

「えっ、じゃあなに、アナタ結婚してんの?」

少し言い方が悪かったか、またひそかに苦笑した。

「いやそうじゃなくて、俺がここの家事やってんの」

「お手伝いさん?」

「でもなくって、なんつーか、今ここには俺と、姉貴と、妹の三人しかいなくてさ。で、俺が家事やってんだ。そういう意味で主夫なんだよ」

「ふーん」

適当な相槌を打ちながら味噌汁をすすった彼女は、

「ま、世の中もいろいろよね……」

「?」

なんだか一瞬、やけに冷めた口調で、僕にというよりも、自分自身の内側に響かせるように、呟いた。