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姉貴の好みの目玉焼きは、とろーっと中身が溢れるような焼き加減だ。けれど、

「しっかり焼いて、中までしっかりね!」

「はいはい」

朝六時四十分。姉貴が起きてくるよりも少し早いこの時間、僕に強く念押ししている彼女の好みは、まったく正反対だった。

とりあえず、早く焼けるように蓋をしておく。

「それからさ、お味噌汁とご飯まだ? そっち先に食べちゃうから、よそってもらえる?」

「ああ、はいはい」

真乃は、今、僕達の、食卓の、姉貴の、席に、いる。

なんでかっていうと、玄関先で鉢合わせた彼女に一番、

「ちょっとランニング行ってくるから」

なんてことを言われてしまったからだ。