その道すがら、彼女が言う。
「なんだか、記憶が飛んじゃったりなくなっちゃったりするの」
『ヘン』というのが、たとえば、ドジをするとか、物忘れをするとかいうようなものだと思っていた僕は、特別見るでもなかった姉貴に、目線を落とした。
後ろからなので、彼女のうなじを見つめる形になる。
「部屋にいたはずなのに、いつの間にか車椅子から降りてお風呂にいたり、料理するつもりじゃなかったのに、どうしてか包丁持ってたりするの」
「なんだそれ? 姉貴疲れてんじゃねぇの? また陶芸で遅くまで皿とか作ってたんだろ」
「なんだか、記憶が飛んじゃったりなくなっちゃったりするの」
『ヘン』というのが、たとえば、ドジをするとか、物忘れをするとかいうようなものだと思っていた僕は、特別見るでもなかった姉貴に、目線を落とした。
後ろからなので、彼女のうなじを見つめる形になる。
「部屋にいたはずなのに、いつの間にか車椅子から降りてお風呂にいたり、料理するつもりじゃなかったのに、どうしてか包丁持ってたりするの」
「なんだそれ? 姉貴疲れてんじゃねぇの? また陶芸で遅くまで皿とか作ってたんだろ」

