オレンジ色にして

彼女は、実は、信じられないほどの大食だった。

家ではお茶碗にご飯一杯、そしておかずを流し込めば腹いっぱいという状態なのに……

姉貴が注文した『いつもの』は、普段の食事の三倍はあろうかという、ジャンボな器に盛られていたのだ。

チャーシューは全部で十枚、ドンと乗せられたメンマに、ちょこんと飾られたナルトは三枚、ネギとモヤシ、それから丸々一枚突っ込まれたのりが、どんぶりのふちを隠していた。

「全部食うの?」

と訪ねた僕に、姉貴は少しずれた回答をした。

すごく美味しいのよ、だ。

怒る気には、ならない。

ラーメンを食べている時の姉貴はどうしてかすごく嬉しそうだったし、楽しそうだったし、なにより、僕の見たことない笑顔が溢れていた。

すごく、顔が綻んでるな、と呟いたら、彼女はなんと答えたか。

「冬弥は美味しいもの食べてる時、幸せになれない?」

……本当に、こんなにも、姉貴は。

僕は、たぶん知ってるようで、彼女のことを、知らないんだ。