オレンジ色にして

どこか困った口調で、彼女は喉から声を絞り出す。

「私に、恋人なんてできるわけありませんよ……」

「――」

おやっさんの指の意味がわかった僕はつい、そんなことねえよ、と叫んでしまいそうになるのを、必死にこらえた。

姉貴は、ただ足が悪いだけだ。

姉貴は、愛想笑いが苦手なだけだ。

姉貴は、体と心の中に『自分』がひとり多いだけだ。

たったそれだけなんだから、恋人ができないなんて、そんな悲しい顔で断言するなよ。

そう言いたかった。

けど、よした。

僕がそう言ったとしても、彼女はきっとまた困った顔半分、作った嬉しい顔半分で、こう言うんだろう。