オレンジ色にして

「おめえは秋乃ちゃんの、なんだ? あん?」

「え、え……?」

「あ。お、おじさん、勘違いしないで」

どんどん眉を吊り上げて、そのうち皮のいちまい向こうからトラが顔を出すんじゃないかってくらい――

というより、周囲のお客さんが引いてしまうくらいの形相になった時、姉貴が慌てて口を挟んだ。

「こっち、弟なんです、私の」

「ど、どうも……」

便乗して小さく会釈すると、おやっさんの顔が猛獣から、お面でも外したみたいにパッと、人間に戻った。

「ああ、そぉっかそか。たしかそんなこと言ってたな。俺ぁてっきり、秋乃ちゃんの『これ』かと思っちまったぞ」

『これ』――と言っておやっさんが突っ立てのは、親指だった。

よく意味がわからなくて首をかしげた僕と違い、姉貴は珍しくはにかんだ表情で、少しうつむいた。