オレンジ色にして

どうしてか、悔しかった。

母さんのほうが姉貴と接する時間が長かったのは、事実だ。

だけどなんとなく、本当に意味がわからないぐらいなんとなく、姉貴のこの表情を知るのがこんなに遅れたこと自体が、悔しかった。

きょうだいとして、僕は、知らないことが多すぎる。

気分が上向いている姉貴に、そうだな、と生返事をし、僕は店の引き戸を開けた。

ガラララ、と鳴った音に重なって、

「らぁっしゃい!」

と、威勢のいい声が僕らを迎えた。

カウンターの中、チャッチャ、と軽い音でラーメンを湯通ししていた声の主は、無精髭にねじり鉢巻、『頑固』という言葉をそのまま人間にしたような面構えの、『おやっさん』だった。