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「あっ、そこそこ、美味しいのよ、あのお店!」

という姉貴の言葉で僕らは、彼女が指差している一軒の店を目に映した。

まず飛び込んできたのは、巨大な招き猫。

ぎょろりとした目の白い猫が、右手を掲げてにんまりほくそえんでいる。

その体の前面で抱えている小判には、『万来軒』とあった。

風格とかなにより、ものすごいインパクトのある店構えだ。

芳醇というより、濃厚なダシとスープの匂いが、通りにまで流れてきている。

「えーっ!」

と、0・5秒で不満を爆発したのは、夏輝だった。

さらに、げー、とか、たらたらしたぼやきが加わる。