姉貴がくるりと振り返り――あんなことがあったばっかりなのに――あんまりにも無垢な表情で僕を見上げたので……

思わず立ち止まってしまった。

真っ黒な瞳が、僕の目をまっすぐに見つめ尽くす。

そして、

「そう、だね。そうなんだろうね」

言った姉貴の顔がまるで、冬弥ならそうするだろうね、と言っている気がして、僕はなんとなくそっぽを向いてしまった。

その、不幸をひとりで背負ってしまっているような顔が、姉貴のいつもの顔ではある。

だけど、その顔をしている限り姉貴は、心に重荷を背負い続けるんじゃないだろうか。

そう思うとやるせなくて、やるせなくて、どうしょうもなく、……やるせなかった。