オレンジ色にして

その彼女が自分から提案するというのだから、僕は――ひょっとしたら夏輝も、驚きを感じた。

だから素直に、

「なんだよ、言ってみ?」

と、促したんだと思う。

彼女が多重人格障害になってしまったからの同情とか、本当は一番発言力のある長女だからとか、そういうことじゃなくって、たぶん、別のものに惹かれて。

姉貴は、えっと、と前振ってから、

「私の行きつけのお店があるんだけど、そこに行かない?

とっても美味しいお店でね、いつもサービスしてもらってるの」