その時僕は、彼がぶつかってしまったことを言ったんじゃなく、

そんな目をしなくてもいい、と僕に訴えたのだと、悟らせられた。

一瞬のことなのに、ほぼ間違いなくそう感じさせられたのは……

おじいさんの目に、なんて言ったらいいんだろう、威圧的ではないけれど、とても強いなにかを感じたからだった。

「すみませんね。……さ、行きましょうか」

看護士さんが切り上げるように言って、おじいさんなスーッと角の向こうに、消えていく。

僕は、少し、うちひしがれていた。

もしかしたら、あのおじいさんだけじゃ、ないのかもしれない。