五日前まで、事故で下半身不髄になってしまった姉貴の車椅子を押す役目は、母さんが担っていた。

今年で21になる姉貴が車椅子での生活を余儀なくされたのは、四歳の時からだ。

あまりに僕が小さい時の記憶だから、これは母さんに聞いた話になってしまうのだけれど……

父さんは僕よりひとつ下の妹が生まれてすぐ、車の衝突事故で頭を強く打ち、そのまま死んでしまった。

その時、一緒に乗っていた姉貴は偶然一命を取り留めたものの、下半身の自由が利かなくなってしまったのだ。

今では、血の滲むようなリハビリのおかげで、なにかに掴まりながらなら立つこともできるが……

歩くことまでは、まだままならないらしい。

だから母さんが車椅子を押していたんだ。

あくまでも、五日前までは。