僕は彼女を心配した。

なのに姉貴は、わざわざ自分から、泥沼に足を突っ込んだ。

(こんな風に思うのは恩着せがましいかもしれないけど)

母さんがいない今、主夫として家族の体調とかモチベーションとかの管理をする僕からすれば、姉貴には、夏輝には、あまり落ち込まないでもらいたいんだ。

食欲がなくなってしまったら困るし、なにかに投げやりになられても困る。

まるで親みたいな言いぐさで繰り返すけど、心配なんだ。

「そ、ぅ……――かも、しれません」

と、姉貴は長い長い沈黙の末に、先生へ答えた。

横顔はまだ、見慣れているけど暗い、僕の嫌いな顔。