(また、そんな顔なんかすんなよ……)

と、僕は人知れず、歯噛みする。

昨日、姉貴が突然ヘンなことになって――

自分は『真乃』だって言い出すような、よくわからない状態になってしまったのを、僕は姉貴に、言うか言うまいか、悩んだ。

いや、正直なところ、言わないでおこうと思っていた。

姉貴は、自分がヘンな風になってしまうことを、薄々察していた。

けれど、だからってその本人にいきなり、自分のことを真乃って言い出したけど、なんなんだよ? ……責められるわけが、教えられるわけが、なかった。

口出しするのが、怖かった……のかもしれない。