「コスモスを、見に行こうと思って」

「いつものとこか?」

「うん」

彼女の声は和やかだけれど、その端々には、悲哀の色が少し、滲んでいた。

それが、彼女の声を沈ませている理由が、思い出せば僕の胸にまで……

まるで擦り傷に水を染み込ませられたように、ジンジンと痛く届いてくる。

吹き飛ばすように、あえて、無理をするくらい強い口調で、答える。

「よしっ、任せとけ! 今日も特急だ」

「ちょっ、ちょっと、急がなくてもいいんだよ?」

「……そか?」

「うん。そう」

ただ、まあ、空回りしたみたいだけど。