夏輝の言葉を受けて、あらあら、と溜め息のようなものを漏らした仲代先生が、

「あのね? 多重人格っていうのは、演技じゃないの」

ずいと前のめりになった。

「たとえば、アナタのお姉さんがとんでもなくドジで――簡単な、1足す1もできなかったとするわ。でもだからって、多重人格にならないとは限らないんですよ」

「ふ、うーん……?」

大人の女性の迫力がそうさせるのか、夏輝はなにも言い返せないようだ。

仲代先生がゆっくり体を背もたれへ戻すのに合わせて、夏輝が、そして僕と姉貴も、いつの間にか引いてしまっていた体勢を戻した。

なんだかわからないけど、仲代先生はものすごい存在感を持っている。