「私が育てるんでしょ。いいね、最高」

「そ、そっか、ならよかった」

ホッと胸を撫で下ろすとは、まさにこのことだった。

「なんだったっけ、この種?」

と訊かれて、僕はもう一度、今度は得意げに答える。

「コスモス。お前と初めて会った時に、咲いてたからさ」

「ふーん、そっか。そういえばそうよね」

今度はふんわり笑った彼女は、袋の口をに折って閉じると、スカートのポケットにそっとしまい込んだ。姉貴はあまり、ポケットの中にものを入れない。だからそれは、真乃だけのものだ。

「これ、咲く時は何色かしらね」

いつだったか、どこかで訊いたことのあるようなセリフにほんの一瞬小首を傾げる。

「……さあ、そこまでは解かんねえよ」

けれど彼女は、

「オレンジ色がいいわね。ううん、オレンジ色にして。アナタと出会った時の色」

珍しく目線を、はにかませていた。