オレンジ色にして

広田と姉貴がキスをしていた。

その光景を目の当たりにして、耐えられなくなって、逃げ出した。言葉にすればたったのこれだけ。

だけど、たったそれだけを彼女に言うまでに、僕のは潰れてしまうかもしれない。それを口にした途端、僕は姉貴と広田との仲を、完璧に認めざるを得なくなる。それが、なによりイヤだった。

「どうして?」

答えない僕に、真乃が繰り返す。

沈黙が、川の流れに乗って、静かにそよぐ。それがなにも生み出さないと悟るまで、一分くらい掛かった。

仕方なく、本当に仕方なく、僕は答える。

「姉貴と広田が、―――してたから……」

「……そう」

なにを、とは言わなかったけど、真乃は解かったようだった。

視界のはしのほうで、彼女がスッと片手を持ち上げたのが見える。

唇に、触れているのだとなんとなく予想できた。