何度目だろう、もう、逃げることしか出来なくなっていた。

ひたすら、姉貴達とは反対方向へ、走る。姉貴に促されて広田が追っかけてくるかもしれないと思ったら―――ヤツに捕まるぐらいなら死んだほうがいい―――なおさら、足が早く回った。

姉貴は広田を家の中へ招くだろう。

きっと最初からそのつもりで、あの車はあそこへ止まったんだ。広田も、姉貴を送っただけじゃないはずだ、姉貴がきっと言ったんだ。

今日は弟が腕をるってるんで、一緒にどうですかとかなんとか、そんな風に。

そうさ、どうせ僕なんか、姉貴にとって広田を家に招く口実に過ぎないんだ。

(くそっ、くそ……!)

だれをどれだけ恨んでも、壁にボールを投げるように跳ね返ってくるそれは、結局、僕を痛めつける。

悪いのは姉貴じゃない。僕だ。僕がいけないんだ。解かってる。僕がいけないんだ。ああそうさ、僕がいけないんだ!

それがどうした!

それが―――

「っ~~~!」

やる場のない怒りと焦りが箱の中の炎をさらに燃やして、喉が熱くなって、

「――――――――――っっ!」

僕は、走りながら叫んだ。

なんて叫んだのかは、自分でも解からなかったけど―――それでもやっぱり、スッキリしなかった。