オレンジ色にして

「さあ、どうぞ。秋乃さん」

「あ、ありが、とう……」

そして当然のように、姉貴の体に腕を回して、僕の目の前で、彼女を抱きかかえる。

脇の下から腕を差し入れて背に回し、相手には首に腕を回してもらう―――それが負担の少ないな抱え方なのは、僕も知っていた。

知っていたけど、

(どうして、姉貴は、敬語じゃないんだ)

姉貴のが敬語じゃなくなっていたこと、そして、申し訳のなさからとは違う、別のなにかにする彼女の面持ちが、ちかちかとする車のランプに、照らされていたのを見た途端、その行為自体が、とてつもなく意味を持つなにかに見えてしまった。

ついさっき(ばかげたことにも)したこととはまったく正反対の事態に、僕は、まだポケットの中にある彼女へのプレゼントを、ズボンの上から叩き潰してしまいたくなった。

僕が望んでいたのもはなんだったんだ。

僕が必死に手に入れたかったものはなんだったんだ。僕がなによりも恐れていたことはなんだったんだ。

どれもこれも、そうそう起きやしないと浅はかに思っていたのに……どれもこれも、簡単に目の前で起こっている。