オレンジ色にして

二つの影が、ある一点でくっついている。

一方が、体を乗り出す形で、二つのシートの間を横切っていた。

一瞬、それがなんなのか解からなかった。

いや、うそだ。

一瞬で解かったからこそ、固まった。

―――キスだ。

うそだろとは、思わなかった。

むしろ、やっぱりと思った。

だけど、だからって、納得さえも出来なかった。―――だけど―――今一番叫びたいことだけど―――くそったれ!とも、言わなかった。本当にただ、やっぱりと思って。

そこから、心が凍って、動かなくなってしまっていた。


と、身を乗り出していたほうの影が、なにかに弾かれるように、僕のほうに向いた。

その動きにハッとした僕は、いつのまにか道路のど真ん中、車の真後ろに棒立ちになっていた。

(見つかった)

頭がフリーズする合間にも―――運転席から、広田医師が降りてくる。ひらりと、彼が手を振った。

「やあ、冬弥くん。秋乃さんのお出迎えですか?ほんとに君は、お姉さん思いなんですね」

それが、ほんとに君は、お邪魔虫だね、と聞こえた僕は、震えた。

僕が打ち震えている間に、彼は車のトランクを開けて中から折りたたんだ車椅子を引っ張り出すと、助手席のドアをあけた。