(帰ってきたんじゃないのか?)
不安になって、そろそろと玄関を抜け、つい忍び足で、僕は車へと近づいて行った。車は我が家に、テールランプを向けてる。後ろから近づく形になった。
なんだかひどくなことをしているような気さえしてきたものの、いまさらどうして、やめられるもんか。
なんで姉貴はさっさと降りてこないのか、なんで広田医師は姉貴をさっさと降ろさないのか、気になって……不安になって、ただそれをたしかめることしか、頭にはなかった。
ひょっとしたら、車の中でいちゃついているんじゃないかという考えが浮かんで、思わず拳を握った。
そんなことない。あってほしくない。ものすごく可能性のあることは解かってる、でも、お願いだから、頼むから、それだけは……。
だけど、固めた拳で広田を殴るような権利は、僕にはない。
榊原秋乃は、僕の姉貴だ。僕が嫉妬を起こすなんておかしい相手だ。
だから、この拳のやり場がない。いっそこんな、愚かしい自分を殴り倒してやりたいとまで考えた時、僕は、スモークガラス越しに、それを見た。
不安になって、そろそろと玄関を抜け、つい忍び足で、僕は車へと近づいて行った。車は我が家に、テールランプを向けてる。後ろから近づく形になった。
なんだかひどくなことをしているような気さえしてきたものの、いまさらどうして、やめられるもんか。
なんで姉貴はさっさと降りてこないのか、なんで広田医師は姉貴をさっさと降ろさないのか、気になって……不安になって、ただそれをたしかめることしか、頭にはなかった。
ひょっとしたら、車の中でいちゃついているんじゃないかという考えが浮かんで、思わず拳を握った。
そんなことない。あってほしくない。ものすごく可能性のあることは解かってる、でも、お願いだから、頼むから、それだけは……。
だけど、固めた拳で広田を殴るような権利は、僕にはない。
榊原秋乃は、僕の姉貴だ。僕が嫉妬を起こすなんておかしい相手だ。
だから、この拳のやり場がない。いっそこんな、愚かしい自分を殴り倒してやりたいとまで考えた時、僕は、スモークガラス越しに、それを見た。

