オレンジ色にして

ああ―――――僕の心臓を、えぐり出せればいいのに。

そうすればきっと、僕はもぬけのからになって、なんにも苦しまずにすむのに。

「おっ、おっ、おっ、ちょちょちょちょい待て夏輝!そこ中心じゃねえぞ!もちっと右だ右!」

「あー、っつーかムズい!ってゆーかタルトって生地チョーいんですけどぉー!ねえ、ちょっ、お兄ちゃん!?」

「……んだよ」

まったくもって騒がしい二人に呼ばれて、僕は昼寝を邪魔されたライオンのようにふてくされた気分で振り返った。

ポーカーフェイスが死ぬほど苦手な僕だ。どんな顔になっているのか解からないけど、僕が振り返ったその一瞬、二人が少したじろいだのが窺えた。

けど、

「おうっ冬弥、コイツなかなか切れねぇぞ! ナイフが悪ぃんじゃねえのか!?」

「ちょっとこっち来て、お兄ちゃん切ってよ! このままじゃケーキがだいなし!」

そんなことよりも、ケーキのほうがよっぽど大事らしい。どうした? とも訊いてくれない。

もっとも、答える気なんてないけど。