オレンジ色にして

なにはともあれ、夏輝でさえ気付けるほどだ。ほとんど、ひょっとしたら周囲からは、『お似合いな二人』みたいに見られているのかもしれない。医者と患者というだけじゃなく、ビジュアルも含めて、あらゆる意味で。

そう思うとなおさら、むしゃくしゃしてくる。

「ぃよーし、秋ちゃんがいねえのはちぃとさみしーが、さくっと切り分けちまうか」

「おっ、デンじい乗り気だねーっ。よーしよし、チョーさくっといっとく?みたいな感じで!」

ケーキナイフ片手にはしゃぐ二人をよそに、僕はひとり、食卓の準備をすませた状態のまま、ソファーに腰掛けて、項垂れていた。気分が乗らない。

姉貴を奪われることは、僕にとってそのまま、真乃を奪われることだ。だとしたらいずれ、広田に、真乃の笑顔までも奪われるのだろうか。

そんなのは、耐えがたい。行き過ぎたドラマとかの展開に、愛しているから殺すとか、独占したいから殺すとか、そういうパターンがあるのは知ってる。

見れば鼻で笑い、聞けば苦笑したそのストーリーの気持ちが、でもなんてことだろう、今の僕はよく解かった。

殺してしまいたいとは思わない。だけど、このやるせないを、いったいどうすればいいのか解からない。そんな感じだ。