オレンジ色にして

「ちょっとぉ、ちゃーんと話聞ーてんの?」

「目ぇうつろだぞ? おい、冬弥? 死んでっか?」

と、夏輝と(いつのまにかやって来ていた)デンさんに呼びかけられて、

「:::ああ、いや」

僕はバカな妄想をやめた。

都合よく想像したところでそんなものは無意味だし、勝手に思い描いたものとのギャップがあってバカを見るのは、テレビの悲劇の主人公だけで充分だ。なんで僕がそんなもの背負わなくちゃいけないんだ。アホらしい。

姉貴はどう見たって、広田医師に惚れてる。

前に一度、僕が忙しくて、夏輝が姉貴を足の検診に連れて行ったことがあったけど、帰ってきたアイツはニヤニヤしながら、

「ねぇね、知ってるぅ~? お姉ちゃん足診てもらってる間、ずーっと真っ赤っかだったんだよ。ありゃチョーマジっぽいみたーい。知ってたぁ?」

あの時は、はっ倒してやろうかと思った。あ、いや、夏輝をじゃなく……いや、そんな胸くそ悪い話をする夏輝もろとも、あの広田を!