オレンジ色にして

姉貴というものを理解している、姉貴じゃない彼女は、姉貴の代わりに出てきた時、まるで羽を伸ばす天使のように思えた。

世界をいっぱいに浴びるというか、いまそこにいることを楽しもうとしているのが表情から見て取れるのは、僕の目が色づいてしまっているからだろうか。

車椅子からは降りず、僕に押されながら、彼女が続ける。なんだか、楽したい気分なんだそうだ。

「ねえ、すごい奇跡だと思わない?」

「なにが?」

「私の誕生日とイヴが重なることもだけど、その日がちょうど診察の日で、私はこうして自分の誕生日を記憶できる。一日早くても、遅くてもダメ。今日という日に私が顔を出せたのは、すごい奇跡よ」

言いながら、真乃は車椅子の上で小さく笑いつつ、はしゃいでいた。姉貴じゃ、絶対にしないことだ。

僕は―――チクショウ、よくもそんなに普通にしていられるな―――俺がどんだけ―――心の炎をじっくりじっくりはこの中に押し込め直すことに気持ちの九十パーセントを。