オレンジ色にして

悔しくて悔しくて。

いや、バカなくらい切な過ぎて、喉もとをっかれたように急に呼吸が空さみしく感じていた僕は、自分の爪が食い込む痛さで我に返るほど、とてつもなく強く拳を握り締めていたからだ。

もしもプレゼントを手の内にしていたら、握り潰してしまっていたところだ。


さらに言うなら、その時の真乃が少し、姉貴に被って見えたのが、さらに僕の胸を締めつけた。

ああ、やっぱり彼女は、僕の姉貴でしかないんだと、むなしいくらい。

診察が終わってからはいつも、姉貴に戻って診察室から出るか、真乃のままでいるかを仲代先生は訊く。

彼女は『無理強い』というものが嫌いだそうだし、精神科はそもそも心の病まないのだから、最終的にどんなことでも患者の意見を尊重したいそうだ。

それで、今回、真乃は姉貴とは入れ代わらなかった。

「だって、今日イヴでしょ?私の誕生日よ。一日くらい、いいじゃない」

というのが、彼女の言い分だ。