そして僕が押している車椅子は、どういうわけか今、彼女が買いあさったリンゴジュースのパックを載せるカートにされている。

つまり、彼女は車椅子には乗らず、自分の足で悠々と歩いているということになるのだけど……

あの姉貴が?

……不思議だ。ひたすら不思議だ。というより、信じがたい。

昔のことだけど、僕が小学校の運動会でかけっこをし、一位になった時に、訊いたことがある。

どうして車椅子なの? 姉ちゃんは走んないの? って。

そしたら姉貴は、

「あのね、仕方ないんだ。お姉ちゃんは」

と、曖昧に笑って答えた。