姉貴の意思を尊重したんじゃない。

真乃がそう言った気がしたからだ。

真乃と同じ声がそう言ったからだ。

そして―――割られた板チョコのかけらを僕らがひとつずつ受け取り、また、始まる。
仲代先生の、催眠療法が。

アロマキャンドルがつけられて、そのがランタンのようにゆらゆらと姉貴の前で振られる。

右へ、左へ、少しを描くように。そうして、ほんのりとにキャンドルの香りがい始めた時、かくり、と姉貴の首が。

「―――……ああ」

そして、彼女が僕の前に、また現れた。

「ん、ん~……なんだか、すごく長い間寝てたような気分」

車椅子の上で伸びをした真乃に、仲代先生が一番、ふっとキャンドルを消してからあいさつする。

「こんにちは真乃さん。お久しぶりですね」

「はいはい、こんちは、多美さん」

素直に返事をする真乃は、仲代先生の経験からすると、とても素直なタイプらしい。