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どういう時間のいたずらだろうか、仲代先生のとこへ行く日とちょうど、クリスマスイヴが重なった。そしてイヴは、姉貴とは違う、真乃の誕生日でもあった。

ちなみに姉貴の誕生日は十月四日で、母さんが死ぬほんのちょっと前だった。

そして……今、僕のズボンのポケットには、彼女への贈り物が入っていた。金はかけられないから、残念ながら、大したものじゃないけど。

「チョコレートケーキがいいですよね、やっぱり」

「いや、仲代先生には聞いてないんですけど」

「あ、でも、チョコレートケーキいいよね。お願いできる?」

と両手を合わせた姉貴に見上げられて、

「まあ、姉貴が言うなら……」

僕はと頷いた。

クリスマスケーキを買うのは高いから僕が作ろうということになって、それならどんなケーキがいいかって話だ。

びりびりと包装を破いて、出した板チョコを割りながら、仲代先生が言う。

「冬弥くんもお姉さんには甘いですねぃ。さすがは一家を管理する主夫ってところかしら」

「別に。そんなんじゃないっすよ」

そう、そんなんじゃない。

ただ僕は、姉貴の表情のに、真乃を見て、重ねてしまっただけだ。

姉貴が言うなら? 違うだろ。バカ。