オレンジ色にして

「たとえばどんなのがあるかなーとか、そういう参考を聞きたかったんだけど?」

「ああ、なるほど」

これもまた演技っぽく、デンさんはポンと拳を掌に乗せた。小説家はみんな、行動が少し演出っぽくなるのだろうか?

さておき、彼は言った。

「いっそあっぱれなくらい安直に、花なんてどうだ。花言葉の意味も込めたら、結構深いもんだぞ?」

「花、か」

花言葉と聞いて、浮かんだのはバラだった。誰でも知ってる。バラの花言葉は、『情熱』とか『愛』とか、熱い激情・スペインそのまんまみたいなものだ。

だとしたら、全然隠せてないし、それとなくじゃない。ダメだな。

「もしくはほれ、誕生石とかあんだろ? あんな感じで、お手ごろなのもありじゃないのか?」

「ああ、なるほどぉ~」

さすがに半世紀を生きながら、日々空想の世界を作り上げるデンさんはいる。僕は思わず、二度三度頷かせられた。

ただこれも、

「つっても、誕生石もまあ流通してるからな。もしかしたらある意味、ありきたりすぎてつまらんかも知れんな」

「そ、そうなの……?」

人生経験な彼にとっては、最良の考えではないらしい。