オレンジ色にして

この間―――僕が小川で告白したあと―――真乃は、




「そんな、急には答えらんないわよ。私は私だけど―――…でも、アナタと秋乃さんのことも知ってるし。……少し、時間ちょうだいよ」




と言って、僕を置いて、去ってしまった。

というより、こっちが耐え切れなくなって、いつまで待つんだよと訊く前に、真乃は姉貴と交代してしまったのだけど。

あとから仲代先生に聞いたことだけど、人格の交代には、感情の動きや、『逃げる』ということにも関係しているらしい(催眠療法の場合、そこを突いて人格をサルベージするそうだ)。

つまり真乃は僕から、一時的に『逃げた』というわけだ。

「なあデンさん、なにがいいと思う?」

改めて訊いた僕に、デンさんは手にしていた万年筆を机に置き、それらしく唸って見せて―――もったいぶってから―――答えた。