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僕には信念――というか、モットーというか、ただ生活するにしてもなんにしても、心得がある。

相手のことはよく観察することだ。

「あー、これ、果汁何パーセントかしら。表示……ないわね、んもう」

車椅子を押す僕の前を進む彼女は、ほとんどすり減ってない靴の裏を景気よく地面とあいさつさせている。

揺れているのは長くて黒い三つ編みで、手にしているのはリンゴジュースの紙パックだ。

彼女はさっき突然、僕を奴隷のように引っ張って、リンゴジュースが買える場所はないかと問い、この商店街へ連れてこさせたのだ。