「まあたしかに、クラシックってなんかこう、ちょっと落ち着かせられるし」

すると彼は、うんうんと二、三度頷きつつ、

「おっ、若ぇのにいいとこ突くな、冬弥。さすが老け込んでるだけあんな」

「せめて大人びてるって言ってくれよ」

「ああ、悪ぃ悪ぃ」

そしてまた二、三度頷き直し、笑った。



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「あら、いいじゃない。人間悩んで大きくなるものよ。別に私、仲代先生ってわけじゃないけど、人の悩みくらい親身になって聞いてあげられるわ」

指先で小石をもてあそびつつ、自慢げに腕組みをする彼女はやっぱり、僕にオレンジ色のコスモスを連想させる。

儚い桃色はどこにも見えないし、そのオレンジがいっそう、彼女を引き立てているようにすら思えた。

「……実はさ」

僕は、自分でも、胸の奥にある封印の箱の中から、炎が今か今かと爆発するのを感じながら―――だから長い一拍を置いて―――言った。

「俺、好きなんだ。お前が」


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