オレンジ色にして

「頼むから、そんな風に言わないでくれよ。俺、耐えらんねえよ……」

「えっ、なに?どうしちゃったのよ、冬弥」

「頼むからさ、言わないでくれ、もう」

最後のほうは、激情が怒涛のように押し寄せてしまって、ほとんど涙声になってしまっていた。

なにかを告白したわけでもないのに、彼女に責め立てられたわけでも叱られたわけでもないのに、ましてや、僕が胸にしまっているものが霧散したわけでも、なくなってほしくないなにかを失ってしまったわけでもないのに、鼻の奥がつんと熱くなって、たまらなかった。

「ねえ冬弥、大丈夫?どうしたのよ冬弥?」

「……っ、く、ぅ……」

そして気がつけば、真乃がぐっと腰を屈めて、僕の顔を覗き込んでいた。

いやそれは、僕がまたいつのまにか、深く深く、うずくまってしまっていたせいだ。

覗いてくる真乃の顔が、ほんの少し、青い。なにかを心配して、なにかを不安に思って、なにかを悪い方向に予期しているその顔は、姉貴のそれと、似ていた。

そんな顔が見たいわけじゃない。だけど、だからって、僕がそれを願ってどうする。