さばさばしていて話しやすい女教師・春山が、僕をねめつける。

「楽な仕事じゃないぞ、介護士~。ほかにも希望してるやついるけどなあ、そういうヤツは職場見学も老人ホームとか訪ねてるしな」

「ああ、そうなんすか」

僕らの学校じゃ、一年生と二年生の時、それぞれが希望する職場へ、見学・体験に行く時間が設けられている。

将来をそれこそ、高校入学と同時に見つめているほんの一握りのヤツは、自分の夢に向かって、そういうのをきっちり選んでいた。

ちなみに僕はガソリンスタンドに行って、『ありがとうございます』を短縮した『あざーす』って言葉を学んだくらいしか収穫はない。

当時僕は、家のこと以外で世話を焼くのがイヤだったから、保育園とか老人ホームにいっているヤツの気持ちがまったく解からなかったけど……今となっちゃ、ちょっとくらいそっちのほうに踏み込んでいたほうがよかったかと、後悔している。

「どんな仕事でもな、綺麗な内容ばっかじゃないぞ。早い話が、身のお世話だからな。排泄とか、普通に手伝ってやんないといけないんだぞ」

「はあ、まあ、聞いたことぐらいあります」

と、安易に相槌を打ってから、しまったと思った。