ただ、

(もう、ほっといてくれ……)

ちゃんと前を見ろと教えてくれた母さんに反して、僕はこの時、かたくなに目を閉じ――

「冬弥――」

耳元で囁かれた声に、そして、導かれてしまった。

「――逃げるよ」

「え」

ふぅ――と、腰が浮き、重くなっていた体が、引かれる。

真乃が、手を引いて走っていた。

「あっおいこら! 待てっつってんだろが!? おい! おい~!」