オレンジ色にして

彼女に、
それは姉貴に、
それは真乃に、

惚れてしまった―――

そんな言い方では収まらない、激情を抱いてしまっていることに、

気付かせられる。

何度呪文を唱えても、
何度言い聞かせても、
何度心を封印しても、
何度自分を殺しても、
何度でも燃え始める。

彼女を想ってしまう。

病院を飛び出し、信号を渡って、橋を通り、公園を突っ切って、歩道橋を登って、降りて……

バカみたいに荒れてしまった心のままに、走る。彼女からの距離なんて、関係なく、ただ、でたらめに。

素直になれるような世界だったらいいのに―――

姉貴が姉貴でなければいいのに―――

真乃が姉貴でなければいいのに―――

彼女が彼女でなければいいのに―――

そんな風に、身勝手な願望を抱いた僕は、

(――? なんだ?)

姉貴を好きになったのか、真乃を好きになったのか、

姉貴のことを考えていたのか、真乃のことを考えていたのか、

姉貴を奪われるのがイヤなのか、真乃を奪われるのがイヤなのか、

解からなく、なっていた。

勢いよく回っていた足が、ばた、ばたと足音も情けなく、止まる。突然、体中に鉛が流しこまれたみたいだった。