オレンジ色にして

あまりに簡単に、解かったと伝えて、僕は出口に向かうのをやめて、方向転換した。スタスタと早足になりながら、

「じゃあ今度は、じっくり広田と話し込めよ。止めねえから」

発した言葉は、なぜか、どうしようもないくらい冷たくなってしまっていた。

無理に体を捻ってこちらを見やる姉貴の視線が、怪訝なものから、疑心を秘めたものになった。

彼女にしては珍しく、ドンドン眉根が寄っていく。

「ねえ、冬弥? どうかしたの?なんだか、怒ってない?」

「は?誰が?別にキレてないし」

と、僕は〇・一秒で早口に返した。

いったいなにをどうすれば、姉貴がほかの男のことを想像したと思ったらむしゃくしゃしたなんて言える?

いったいどこをどう考えれば、姉貴が誰か恋人を作るんじゃないかって思ったら悔しくなったなんて白状できる?

そんなことは無理だ!

「……」

姉貴、黙ってるな。僕のほうを見たまま、無理に体を捻ったまま。

真っ黒な大きな瞳を、どうしてそんなに真摯に? と問い質したくなるくらい、奥歯を噛み締めて顔を背けたくなるくらい、まっすぐ向けて、それでもそのまま、黙る。

黙って、僕を見ている。