オレンジ色にして

曲がりなりにも、惚れてしまいそうになった女の頬が、誰かほかの男のことで赤く染まるのなんか見たくないし、それがましてや、あの広田医師だった……

(ころしてやる)

とまで思って、すっかり、自分がまた、妙な考えを起こしていることに気付いた。

慌てて、密かに頭を振り、邪念を振り払う。

僕はあくまでも、姉貴達の面倒を見ているだけ。

真乃には、ただ、表情の豊かさに驚かせられただけ。それだけなんだと、強く言い聞かせる。

(―――強く言い聞かせる?)

ふと、なんだってそんな風に思うのかと、言葉の齟齬を覚えた。

(なんで、強く、言い聞かせなくちゃいけないんだ?)

普通、真乃は姉貴で、姉貴に『そんな感情』を抱くこと自体、おかしい……だから、そう、だから普通にしていればいいはずなのに―――そして、僕はその普通なことに留まっていられるだけの理性があるのに―――

(なんで、強く、言い聞かせなくちゃ、いけないんだ?)

いけない。これじゃ、なにかが完全に狂ってしまっている。

なんでこんなこと、疑問に思わなくちゃいけないんだ。