「その、真乃の自殺願望、また出たりしませんよね?」

もしかして催眠療法は疲れるのか、それとも勧められたその場で食べないと落ち着かないのか、もごもごとチョコ食べる姉貴に代わって訊くと、仲代先生はギイと背もたれに寄りかかりながら、

「さあ、私は精神科医で、真乃さんではありませんから」

と、ずいぶんいい加減な物言いをした。

「ただ、可能性がないとは言い切れません」

つい噛みつこうとしたところを、見越していたのか、制するように彼女は続けた。

「多重人格障害は、簡単に言っちゃえば自己防衛です。つまり、秋乃さんがもし大きな心の負担を抱えてしまえば、それはそのまま真乃さんに反映して、極端な行動に出るかも解からないし、下手をすればもっと危険な人格が新たに形成される恐れもあるわ」

「こ、怖いこと言わないでくださいよ」

「あら、でもほんとよ」

ブラック・ジャックとかは、患者の容態を包み隠さずに言う。

それが患者のためだからだってのは解かるし、理解しておかなければ追々後悔するのも、解かる。