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夏が過ぎても、まだ時おり暑くて寝苦しい日がある、秋風吹き始めた頃。
僕の周りは、季節とは違った意味で、冷え始めていた。
いや、というよりも、沈んでいた。
耳の端に捉えた物音に気付いて、僕はハッとした。
慌てて玄関へ駆けていくとちょうど、ドアがかちゃりと小さな音を立てて閉じたところで――
焦りに焦って、僕は靴のかかとを踏んづけたまま、飛び出した。
「ちょっと待てよ!」
家を出てすぐのところ、叫んだ僕の声に振り向いたのは、黒くて長い三つ編みの女性。
ただしその視線は、背もたれ越し。
ベンチに腰かけているわけじゃない。
つまり彼女は、車椅子に乗っているんだ。
夏が過ぎても、まだ時おり暑くて寝苦しい日がある、秋風吹き始めた頃。
僕の周りは、季節とは違った意味で、冷え始めていた。
いや、というよりも、沈んでいた。
耳の端に捉えた物音に気付いて、僕はハッとした。
慌てて玄関へ駆けていくとちょうど、ドアがかちゃりと小さな音を立てて閉じたところで――
焦りに焦って、僕は靴のかかとを踏んづけたまま、飛び出した。
「ちょっと待てよ!」
家を出てすぐのところ、叫んだ僕の声に振り向いたのは、黒くて長い三つ編みの女性。
ただしその視線は、背もたれ越し。
ベンチに腰かけているわけじゃない。
つまり彼女は、車椅子に乗っているんだ。