だから、タコが黙ってくれたことは、ありがたかった。

なにか思っても、心の中だけで留めてくれるコイツは、いいヤツだ、本当に。まあそれも、ヤツがそこまで思慮深かったらの話だけど。

―――でも、タコが言った福祉関係の仕事は、いいかもしれない。

もともと、姉貴や夏輝の面倒を見ていた僕だ。いまさら、お年寄りの世話が加わったって、上手くやれるかもしれない。

どうせそのうち、デンさんの世話まで焼くハメになりそうなのだし。

(それに、人の役に立てる。間接的じゃなく、直接的に)

思い起こせば、人の、姉貴達の役に立ちたくて家事を始めた僕にとってそれは、ひょっとしたら、向いている職種なのかもしれない。

「―――タコ。サンキュな」

「あ? なにが?」

「いや、気にすんなよ。とりあえず、サンキュな」

「お、おう?」

首をヤツに親指を突っ立てて見せてから、僕はそして、アンケートにサラサラとシャーペンを走らせた。

白紙のままだった最後に、こう書く。

『福祉関係』。

アバウトだけど、方向だけは、これで決まった。千里の道も、まず一歩からなのだ。