「最近そっち系、ニーズたけえじゃん。お前ンとこの姉ちゃん車椅子し、ちょーどよくね?」

そういう考えもあるか、と少し納得させられた。けど、僕はあくまでも現実主義だ。

「簡単に言うけど、そーゆーのは資格要るだろ」

「でも就職すんなら資格あったほうが有利だろ?そういう資格取れるヤツ、最近多いじゃん」

まあ、最近は結構テレビで、資格取得を啓発するようなCMをやってるけど……

「出来るだけ金かけたくはないんだよな。今ウチ、余裕ねえからさ」

「ふーん、そっか」

タコは、簡単に言って、口をつぐんだ。

母さんの通夜には、タコも魚屋の親父さんに連れられてきていた。

だからヤツはこのクラスで唯一、僕がたったひとりで家事をし、一家だけで、ほとんど火の車のような家計で暮らしているのを、知っている。

タコが黙ってくれたのは、ありがたかった。

僕はあまり他人から情けをかけてもらうのが好きじゃないし、同情とかされると、腹が立つなのだ。別に、ひねくれてるわけじゃないと自負しとく。

単純に、なにも知らないヤツが勝手に共感すんじゃねえ、っていうのがその理由だからだ。