人間、やろうと思えばド素人でもカレーは作れるし、変わろうと思わなくても変わってしまう。

そんな風に、誰かの役に立ちたくて、家事を始めた。

料理をちゃんと覚えたら、それを食べた姉貴や夏輝が喜んだ。それからは、いろいろ、ほかにもするようになった。誰かから見れば、僕は彼女達のために、そうやっているように見える。

僕も、最初はそう思っていたし、そのつもりだった。

だけど、とある日に自覚した。

僕は、誰かの役に立つことで、自分の居場所を作っていたんだって。

それからこれは、姉貴に代わり、散歩に出ていた真乃と街中で出くわした時だった。彼女は僕を引っ張って、『万来軒』へ入った。

「あっはっは、おう兄ちゃん、なんでぃなんでぃ、お姉ちゃんの親戚ともお知り合いかい!」

その時、豪快に笑ってから、『万来軒』のおやっさんは僕の肩をばしんばしんと叩いた。

真乃に連れられた僕は、いつのまにか、ここへ連れられてきていた。

歩ける姉貴―――真乃の存在に、おやっさんはどうしてか変な顔をしなかったし、真乃がここを知っているのも、どうしてか解からなかった。

真乃が、小腹が空いたと言ったから、ここへ来たんだ。