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人が最初に作る料理なんて、大して難しいものじゃないだろう。

僕が知っている限りじゃ、卵料理が主流だと思う。目玉焼きとか卵焼きとか、もしくはスクランブルエッグ。手抜きの場合じゃ、ゆで卵から始めたヤツも知ってる。

ちなみにこれは全部、女子だ。驚いたのは、ゆで卵を電子レンジで作ろうとして失敗したなんていう、マンガかテレビでしか考えられないアホをやったヤツがいることだ。

で、誇りたいけど誇れない、主夫歴の長い僕はなにから始めたのかというと―――みんな大好き、カレーだ。

いきなりだろう、いきなりだろう。だからこれは、包丁も使ったことがないし、水とルーの分量はおろか、ミジンギリとはなんだろうって頭を抱えている子供が、カレーから料理を始めた面白い話だ。

でも解かってもらいたいのは、簡単なものじゃなくて、自分の好きな料理を一番に覚えたかったってことだ。

僕が母さんに料理を教えてもらったのは、姉貴が中学に入った時で、僕が小学二年生の時だ。つまり今から……十年近く前のことだ(改めて数えると、なんて長い主夫歴だろう)。

小学二年生だった僕が初めて作ったカレーは、失敗じゃなかった。というのは、母さんほど、美味く作れなかったということだ。