オレンジ色にして

ただ、僕はまたその時、姉貴の笑顔と真乃の笑顔が、どこかで噛み合って、どこかでずれていることに、頭を支配されていた。

(俺、なに、考えてんだよ)

姉貴がいる時に、目の前に姉貴がいるのに、姉貴じゃない姉貴のことを、僕は考えている。

そのことに気付いた瞬間、僕は今まで、なんて冒涜的なことを思い描き、思っていたのだろうと、胸が苦しくなった。

そもそも――そもそも、思い直せ、と僕は自分を叱った。

(真乃は、姉貴だぞ? 姉貴が、真乃なんだぞ? 僕は、その真乃に、なんて感情を抱いているんだよ? ――頭、おかしくなったんじゃないのか、このバカ!)

自分のことをバカだと思ったのは、初めてだ。

家事は出来るし、学校での成績は中の上か、上の下ぐらいだし、ある程度のことは自分で出来る。

そんな自分を、だけど今僕は、最初で最悪なほどに、バカだと思った。

姉貴にも、夏輝にも気付かれないように、自分でもの注意を払いながら、長く、長く息を。溜め息じゃない。でも、息を長く吐く。

――それは自分の中でくすぶる、始末の悪いもの排出するためだった。