オレンジ色にして

チラリとそこで、僕は、目線を上げた。

テーブルは長方形。僕の横には夏輝、正面には姉貴が座っている形だ。だから自然と、顔を上げれば姉貴の顔が目に入る。

姉貴は笑っている。僕の料理を食べて。その笑みで連想するのは、揺れるコスモス。色は桃。そんな気がする。

でも、真乃の笑顔は……なんて言ったらいいんだろう―――あれだけに、これだけに―――僕の脳裏にこびりついて離れない、姉貴と同じはずなのに違う笑顔は……

(コス、モス……?――でも、なにかが違う)

イメージするならやっぱり――コスモスだった。

(――真乃の笑顔は――)

姉貴の桃色よりも明るくて、でも、仲代先生のような明るいものでもなくて――

夏輝の花火みたいに弾けていなくて――

(オレンジ)

ふとして、パッと浮かんだ色が、それだった。

同時に、頭の中で、なんてメルヘンなことだろう、彼女の笑顔の背景にオレンジ色のコスモスが咲き乱れた。

僕はなにをあほな想像しているんだろう――と、自分をたしなめなかった。

それどころか、その一瞬、

(うん、これだ)

と納得して、満足までしていたことに、あとから気付いた。