オレンジ色にして

たった一品に、これだけの好みのせめぎ合いが起こっているんだ、大変さは、並大抵じゃない。

ちなみに、こんな風にどえらく面倒な料理だからキチンとした名前なんてないし、本に載ってもない。

みんなの喜ぶ顔が見たいから、みんなが満足できる料理を目指した。なんていえば、聞こえはいい。

けどそれは実際、ほんとは、僕が自分の居場所を確立したいから、みんなから必要とされて、頼られたいから、磨いた腕なのかもしれない。

ふと時々、そんなことを思うことがある。

(真乃はどんな風に、俺の料理を褒めて――ああ)

姉貴の言葉、夏輝の言葉、そこから自然な流れで、僕は彼女を思い浮かべていた。

――ありがと――

と、また、心に、耳の奥のほうに、声がする。

姉貴の声が、

真乃の言葉が、

僕の中で、何度も何度もリフレインする。

―――ありがと、ありがと―――と。