三姉弟妹がみんな満足できる味を出すのが、いったいどれだけ大変なのか、やっぱり二人は解かってないな。

ダシから味付けから焼き加減から調理法から、あらゆる面を視野に入れたら、毎日の献立なんかとんでもないくらい大変だ。

学校では最も嫌われる行事である『試験』が、僕にとって日々の献立作りから開放される日だ――と言えば、どれだけ大変なのか、少しは想像できるだろうか。

たとえば今日の魚ひとつ取ってもそうだけど、夏輝は骨が引っ掛かるのがイヤだから、まず焼き魚は却下した(かといって、まったく作らないわけじゃないけど)。

骨を柔らかくするためにじっくり煮込もうかと考えたけど、姉貴はあんまりしょうゆっぽいのは好きじゃない。

だからはダメだ(かといって、まったく作らないわけじゃないけど)。

ということでみりんと調理酒を注いで煮込んだ。

これであっさりした味になるわけだ。

で、僕は少しスパイシーなほうが好きだから、こしょうを混入して、また弱火でことことと煮込む(かといって、いつも入れるわけじゃないけど)。